1929年、サイレント映画の黄金時代が輝きを放っていた。その時代には、今なお語り継がれる名作が数多く誕生した。今回は、そんな歴史的な作品群の中から、少しばかり異色の作品をご紹介したい。それは、ハンガリーの作家ブラム・ストーカーの小説「ドラキュラ」にインスパイアされたホラー映画、「ドラキュラの娘(Dracula’s Daughter)」である。
本作は、1936年に公開され、ユニバーサル・スタジオが製作した。監督は、後に怪獣映画の巨匠となるジェームズ・ウェールが務めている。
ストーリー
「ドラキュラの娘」は、吸血鬼ドラキュラ伯爵の娘であるマリヤの物語を描いている。ドラキュラ伯爵は、前作でヴァン・ヘルシング教授によって滅ぼされているが、彼の娘であるマリヤは生きていた。彼女は父に呪われた運命から逃れようとするが、その血統ゆえに人々を襲ってしまう。
マリザは、人間の男性と恋に落ち、その呪いから解放されたいと願う。しかし、彼女の吸血鬼としての本能は強く、愛する者を危険にさらしてしまう。
ドロシー・ラムールと魅力的なキャラクターたち
マリヤ役には、当時人気絶頂だったドロシー・ラムールが抜擢された。ラムールは、その美貌と演技力で多くの観客を魅了した女優だ。彼女が演じるマリヤは、悲劇的な運命を背負った美しい女性として描かれ、多くの観客に共感を呼んだ。
映画には、他にも個性的なキャラクターたちが登場する。マリヤの恋人であるジェラルドを演じたのは、グレン・クランツ。彼は、マリヤの苦悩を理解し、彼女を救おうとする優しい男性として描かれている。また、ドラキュラの娘を追うヴァン・ヘルシング教授の助手、アダムス博士を演じたのは、エドワード・バン・スローン。彼は、科学と理性に基づいて吸血鬼と戦うキャラクターとして描かれている。
映画分析:サイレント映画の美しさ、そして不吉な雰囲気
「ドラキュラの娘」は、サイレント映画ならではの美しさを存分に味わえる作品だ。当時の映画技術によって、暗闇に浮かび上がるマリヤの影や、怪しげな雰囲気を醸し出すセットデザインなどは、現代のホラー映画とは一線を画す魅力を持っている。
また、本作は、ドラキュラ伯爵の娘という設定から、吸血鬼の呪い、人間の愛と葛藤といった、普遍的なテーマも描いている。マリヤが人間としての幸せを求める姿は、観客に深い感動を与えてくれるだろう。
登場人物表
名前 | 役柄 | 演者 |
---|---|---|
マリヤ | ドラキュラの娘 | ドロシー・ラムール |
ジェラルド | マリヤの恋人 | グレン・クランツ |
アダムス博士 | ヴァン・ヘルシング教授の助手 | エドワード・バン・スローン |
まとめ
「ドラキュラの娘」は、1929年の映画史において、あまり知られていない隠れた名作である。サイレント映画ならではの美しさ、そして不吉な雰囲気を味わいたいなら、ぜひ一度この作品に触れてみることをおすすめする。